文

前回”ジャック・ローマン”の「Croisiere」を記事にしましたが、
今回は、本家本元の”ピュルサー”のアルバム『Halloween』を丁寧に紹介しますね。
当初は、英語の発音に合わせて”パルサー”と呼んでいましたが、近年フランス語読みに合わせて”ピュルサー”と呼んでいます。
メンバーの読みにも変更がありましたが、間違えていたらごめんなさいね。

ザ、ハロウィーン!!

クレジット

1977年 3rdアルバム『Halloween』

作詞/作曲/編曲:PULSAR
※Armeand FINES 歌詞の英語化

メンバー
ジャック・ローマンJacques ROMAN キーボード、シンセサイザー
ヴィクトール・ボッスVictor BOSCH ドラム、パーカッション
ジルベール・ギャンディルGilbert Gandil ギター、ボーカル
ローラン・リシャールRoland Richard フルート、クラリネット、ピアノ、ソリーナ
ミシェル・マソンMichel MZSSON ベース

スペシャルゲスト
Jean RISTORI チェロ
Sylvia EKSTROM ”Halloween song”ボーカル
Jean-Louis REBUT ”Time”声
Xavier DUBUC コンガ

国:フランス
ジャンル:ユーロ・ロック(ユーロピアン・ロック)≒プログレッシヴ・ロック

ハロウィーンの誕生

ヨーロッパのプログレッシヴ・ロックの場合ユーロ・ロックという場合もありますが、ここでは総称してプログレと記述することとします。オリジナルアルバムはアナログレコードの為、トータルコンセプトアルバムですがA面B面に分かれています。しかし、あくまでもトータルアルバムの為、同一タイトルのままpart.Ⅰ、part.Ⅱに大きく分けてあります。従って、後にCD化されると本当の意味でのハロウィーンが誕生することとなる訳です。

Halloween part.Ⅰ (20’04)
1 Halloween song (1’20)
2 Tired answers (8’23)
3 Colours of childhood (6’22)
4 Sorrow in my dreams (3’59)
Halloween part.Ⅱ (19’11)
5 Lone fantasy (5’02)
6 Dawn over darkness (6’16)
7 Misty garden of passion (2’15)
8 Fear of frost (3’43)
9 Time (1’55)
※曲の長さはアナログ盤表記ではなく、リマスター・SHM-CDの記録を記載しています。
ちなみにアナログ盤表記は、1(1’20) 2(9’30) 3(6’00) 4(3’40) 5(4’50) 6(6’10) 7(2’15) 8(3’35) 9(1’50)
特に2曲目と3曲目が違うのが気になります。アナログ盤の表記間違いならいいのですが…

 

素晴らしく頑固なピュルサー

頑固なポリシーが実を結ぶ

1966年、場所はフランスのリヨン。初代ピュルサーは、R&B中心のハイスクールバンドとして「Free Sound」というグループ名で活躍していた。しかし、コンサートで共演したデヴィッド・ギルモアDavid Gilmourのステージに触発されプログレ路線へ変更。メンバーチェンジの末フィリップ・ローマン(B)、ジャック・ローマン(Key)、ジルベール・ギャンディル(g,vo)、ビクトール・ボッシュ(ds)の4人に落ち着いた。

地元で精力的にコンサートを行い、1970年に「PULSAR」と改名。そして、Malaval FestivalやGolf Drouotに出演した結果、将来有望なグループとして支持を得、1972年には1stシングル『PULSAR』を発表しベスト・アマチュアグループとして認められる。評論家からも絶賛されるが、プロ入りすることの代償としてコマーシャルな音に方向転換することを嫌い、確固たる自分らを確立させるために2年間を要した。それは大変貴重な期間で、ローラン・リシャール(フルート、Kye、ヴァイオリン)の加入、専用のステージ・ライティング・アレンジャーやマネージャーの確保につながる。そして、機は熟され益々多忙なバンドと成長し、ついに1stアルバムを発表することとなる。

以降、専属サウンド・ミキサーにGerard Trouveの加入もある。そして2ndアルバム制作時にベースのフィリップ・ローマンが脱退しゲスト参加というクレジットとなり、新しくミシェル・マソンが加わるが今回の『Halloween』発表後脱退、以降ベースのポジションはパーマネントメンバーには不在となり、ジルベール・ギャンディルが兼任したり、ゲストミュージシャンを迎えたりしている。

ディスコグラフィー

1975年 1stアルバム『Pollen』(インディーズ・キングダムからフランスで発売)
1976年 2ndアルバム『The Strands of the Future』(同上)
1977年 3rdアルバム『Halloween』(CBSレコードから発売)
1981年 4thアルバム『Bienvenue Au Conseil D’Administration!』(劇作家ピーター・ハンドケと共同)
1989年 5thアルバム『Gorlitz』(インディーズレーベルより発売)
2007年 6thアルバム『Memory Ashes』(Cypress musicより発売)

以上、着々と6枚のアルバムを発表することとなるのだ… とは言えないのが現実で、レコード売上げ、ライブの人気もフレンチユーロ界では初の大成功を収めるとともに、専門家からも絶大な評価を受けていた。しかし時代の流れに逆らうことはできず、3rdアルバムを発表した大手CBSレコードとは1枚だけの契約で終わってしまった。以降は、ピュルサーらしさを断固として変えることなく地道に音楽活動を続けている。そして、そんな時代の流れの中でも、何にも動じない頑固なリスナーによって確実に火をつないでいる。

どこまで頑固なの!?

今回、記事作成に関しては、幸い信頼のおける資料が身の回りにあり助かっています。ほとんどが彼らを称賛する内容なのですが、気になる記事CBSレコードとのネガティブな関係性を書いたものも多かったです。その内容は、今までに増して準備と制作に多大な精力を費やしたアルバムにも関わらず、会社があまり宣伝をしなかった、ライブ活動も支援しなかった、挙句の果ては契約終了となった等々。事前準備もさることながら、スペシャルなスタッフや環境も整えられたこともあり、素晴らしい作品が完成していた。通常なら華々しい次のステップがあってもおかしくないぐらいなので、当時のCBSレコードには腹が立ちますね。

ここから先は、私の想像ですので参考までに読んでもらえればと思います。レコード制作に関しては、もしかしたら会社としてももう少し飲んでほしい要望もあったけど、ピュルサーが少しも受け入れなかったことにより関係性がぎくしゃくしてゴテゴテになってしまった、また契約終了に関しては、既に世間の音楽シーンはパンクやニューウェーブに移行しており、これ以上支えきれないという会社側の事情があったのでは、ということです。私としたら、会社が悪でピュルサーが善であってほしいという願望はあるのですが、どちらにしてもピュルサーが頑固であったからこそ、ピュルサーにしか生みだせない音楽がここにあるのだと思います。妥協してできる楽曲ではないでしょう。

 

ハロウィーンの聴きどころ

Another classic

メンバーそれぞれ好む音楽が多少異なるが、クラシックの作曲家「グスタフ・マーラーGustuv Mahler」を崇拝していることは一致しているらしい。マーラーをよく知らない私は、ピュルサーの音楽を通してマーラーの片鱗やAnother classicを聴いているのかもしれない。

大勢の専門家やプロのライターが絶賛している折紙付きのアルバムですので安心して聴いてください。プログレに馴染みの少ない方、難しそうに聴こえる部分があるかもしれませんが、私作成の紙芝居みたいな動画を見ながらなら聴けば、少しはやわらぐかもしれませんよ。出会いが大切です。もしかしたら、探し求めていたものかもしれませんよ。
また、『Halloween』が良かった、と思われた方はどのアルバムを聴いても愉しめると思いますが、長くてちょっと…という方は、次の曲をつまみ食いすることをおススメします。1stから「Apaisement」「PUZZLE/OMEN」2ndから「Flight」5thから「Gorlitz」等々。

『Halloween』というタイトルの命名ですが、実際の意味よりも言葉の美しさを重要視し、子供時代、魔法、妖精といった想像の世界を彷彿させてくれるところで決定したらしいです。

Another story

2ndアルバム『The Strands of the Future』のライナーノーツで、たかみひろし氏が、音とジャケットの印象でイマジネーションを膨らませて独自のストーリーを描かれていたので、私もそれに倣いたいというか、すでに動画作成でやってしまっていたので堂々と発表したいと思います。しかし驚いたことに、動画作成した後に『Halloween』の日本版紙ジャケに付いていた五十嵐竹實氏のストーリーの訳を読むと、全く違うではないですか!? 佐藤美奈子氏の歌詞訳も全く想像外のものではないですか!?  難しい小説と詩を読んでいるようでした、”残念!”  それにしても、読まずに動画作って良かったあ。読んでいたら、訳わからないまま寄せて行って中途半端な空想しかできなかったと思うから。

基本的にはストーリーが先にあり、それに沿っての楽曲、という部分では大変なハンディを背負っている私なのですが、気を取り直して恥を承知で公表したいと思います。

本家本元のテーマは、理解しがたいのですが恋愛もの(???)のようです。一方、私の描いたAnother storyは、パーソナルな内面的なことも、また多くの人が体験したことのあるお馴染みなことも、あわせて普遍的なものとして捉え、逃避と共生をテーマにしています。映像は普遍的に描いているつもりですが、ストーリーはわかりやすくするためにやや具体的にしています。
まず、part.Ⅰは、心の病気やトラウマを抱えている人が、嫌な出来事からの回避方法として記憶のすり替えのようなことが起きている様を、主人公を男の子として描きました。曲のタイトルも加味しなければならず、自分の中でさえも辻褄を合わせるのがやっとなので、うまく説明できないかもしれません。

続くpart.Ⅱでは、大きいテーマは同じですが、今や社会的にも理解が得られつつありますが、日本ではまだまだ偏見も多いマイノリティーやそれに近い状況で悩んでいる人を主人公にしています。思うに、情緒面も未発達な上に、正しい情報の取入れ方の乏しい幼少期は特に心の病気にもつながりやすいのではないでしょうか。ここで言うマイノリティーは、病名も付かないぐらい些細なことから、人などに危害を与えるような事件性のあるものまで含んでいます。

以上、楽曲とも絡めながら説明していきます。

HALLOWEEN part.Ⅰ (20’04)
1 Halloween song(ハロウィーンの歌) (1’20)
画像1
ペダルの音まで聞こえる生ピアノの伴奏で女の子が「ダニー・ボーイ」をスキャットで歌います。大きな息継ぎが聞こえる幼子の歌で、これから繰り広げられるストーリーを何とも言えない空気感で出迎えてくれます。
いつもの女の子だ、どうしてた?
今日は、鏡に僕の顔を映すことができたので来ちゃったよ。
久しぶりに君の歌声を聞くね。
その歌、何ていうの?
とっても、懐かしい気がする。

 

HALLOWEEN part.Ⅰ (20’30)
2 Tired answers(疲れた答え?) (8’23)
画像2、3
幼子の歌が終わるやいなや、意味深だが意味のつかみきれないレコードの表ジャケットと共に、フルートとフルート系メロトロンの哀愁ただようシーンが突如現れる。そこにシンセやアコギが加わっていき物悲しさが倍増していく。次にリズム隊が入り、徐々に徐々に怪しい雰囲気に変わっていき、8分の7拍子になった時には完全に怪しくなっている。そして、だるーい感じのエレキで終わる。
僕、行く所があるから、また後でね。
最近、鏡に顔を映すことができなかったけど、そういう時って決まって気分が悪くなるんだよね。
周りの人達がみんな怖いお化けに見えるし…

僕は、可愛そうだったから助けてあげただけなんだよ。

 

HALLOWEEN part.Ⅰ (20’30)
3 Colours of childhood(幼き頃の色彩) (6’22)
画像4、5

画像4では、懐かしい思い出を探すシーンで、優しくて悲しい感じのアコースティック楽器で始まる。そして、シンセやストリングス系メロトロンが入り歌が始まった頃には、すっかり思い出にふけっている状況。子供の頃の思い出は可愛らしいものだけではなく、大人になって考えると”ぞくっ”とするような言動もあったりする。また、子供の目に映る色は実に多彩で、太陽の色も赤ではない。すっかり既成概念にとらわれている大人は、ついつい赤色でスケッチしてしまいますよね。また、何でもない出来事が何故か脳裏から離れないという思い出もあったりします。画像5で大人にはわかりにくい子供の目線で表現しました。

あの場所どこだったかなあ、懐かしい人どこにいるんだろう。
印を付けておけば良かったっていつも思うんだけど、急に見つかることもあるから印が付けられないんだ。


本当に、僕は可愛そうだったから助けてあげただけなんだよ。

 

HALLOWEEN part.Ⅰ (20’30)
4 Sorrow in my dreams(夢の中の孤独) (3’59)
画像6、1

画像6は、裏ジャケットの眠る青年の絵で、悲しい歌から始まります。夢に逃避している青年を現実の世界から見た絵だと思いますが、青年の持っている鏡に架空の女性が映っているのは意味深ですよね。現実の目にさらされた、それを知らずに眠っている青年を表現した悲しい終わり方です。画像1では眠る天使を表現しましたが、ここで眠る青年とリンクします。つまり、鏡に自分の顔が映る時は逃避できて、懐かしい場所に行けて懐かしい人にも逢える。逆に、鏡に自分の顔が映らない時は現実逃避できない時です。その鏡に、女性の顔が映るということは…

沢山歩いて、たくさん探したけど、今日は見つけることができなかった。
残念だけど、女の子にサヨナラして、また来ることにしよう。
大好きで大嫌いな、僕の大切な鏡の話し、また聞かせてあげるね

 

HALLOWEEN part.Ⅱ (19’11)
5 Lone fantasy(孤独なファンタジー) (5’02)
画像1

自分でありながら自分でないような孤独な状況を描写しているような効果音。そして何かから逃げ怯えているような息遣いが聞こえる。part.Ⅰの続きではあるが、第2段or第2幕orスピンオフみたいな感じと捉えている。part.Ⅰと同じく孤独な人の印象はあるが、こちらの方は、自分の境遇を理解し社会順応するために自分のマイノリティーの部分を封じ込めている。

私は、本当の私を過去に置いてきている。
今の私が本当の私だと思い込んで、生きていかなければなりません。
だから、そっとしておいてください。

 

HALLOWEEN part.Ⅱ (18’40)
6 Dawn over darkness(闇が明ける時) (6’16)
画像2、3

画像2では、チェロ、ストリングス、悲しい歌の合間にほんの少しコミカルなコンガが入るのだが、主人公が心の奥底に封じ込めている事を開放させようとする甘い誘いに対して、動揺しながらも気持ちが傾いている状況を描いているように思った。この画像は、色々な意味を込めたかったので何枚もフリー画像を重ねて作成した。あまりポップなものにしたくなかったのだか、自分で描けないので仕方ありません。正に、蝋燭の火が消えた辺りから本来の自分に向き合う勇気が出た瞬間で曲調が少し前向きな感じになる。何気でちょこちょこフルートやクラリネットが入っているのだか、ほんの少しの表情を付けるのが大変上手いバンドだ。そして、画像3の七色の鮮やかな蝶々が舞い始めると同時に、エレキの悲しいメロディーで始まりシンセソロに繋げることで主人公の動きが表現されている。画像がモノクロになったところでは、心穏やかになっている状況を描くように、フルート、エレキ、アコギ、歌が神がかり的な絡みでシンフォニーが生まれている。地味かもしれませんが、この部分を一番聴いてもらいたいと思います。

二度と戻らないと決めていたけど、本当に戻っても大丈夫なの?
後でいっぱい、いっぱい後悔することになるんじゃあないの?
私のことを思って言ってくださるあなたのことを、信じます。

 

HALLOWEEN part.Ⅱ (18’40)
7 Misty garden of passion(情熱の霧の庭?) (2’15)
画像4

ストリングスをバックにシンセのアルペジオで始まる、逆か、アルペジオを伴奏にストリングスが旋律を奏でる。全体を通して一番落ち着いた穏やかなシーンである。

穏やかな気持ちがここにある。
ただただ穏やか…

 

HALLOWEEN part.Ⅱ (18’40)
8 Fear of frost(冷淡な恐怖?) (3’43)
画像5、6

穏やかな時は長く続かない。パンドラの箱を開けてしまった後は… 画像5でそれを匂わせる。少しバラバラとしたドラムから始まり、雲行きの怪しい、幽霊でも出てきそうなシンセのフレーズになる。画像6でリズムが激しくなりギターのリフをバックに忙しいシンセソロで盛上げる。主人公が悶え苦しみ泣き叫び後悔するシーンだ。以前受けた苦しみがフラッシュバックとなっている情景を表現した。

えっ? 何? 何が起きているの?
怖い!怖い!
この感覚は前にもあった。
もう、絶対に来ないって決めたことだったんだ…

 

HALLOWEEN part.Ⅱ (18’40)
9 Time(時) (1’55)
画像7、8、9、1

喉の粘膜がめくれて口から出てきそうなぐらい何かと戦った後、時空を超えて戻って来た感覚で座り方もわからないぐらい憔悴しきっている。画像7、8の時計の絵で表現している。2分弱の短い歌の間の出来事で、ミサにも似た男性ボーカルの悲しい歌だ。主人公は、益々自分とは乖離した自分で生きる作業を続けることとなる。画像9は、ピュルサーのメンバーです。

恐怖なんか遥かに超えて、とにかく悲しい。
私は、以前のように違う私で居なければなりません。
孤独でいいのです。

機会があったら、是非あなたのAnother storyを聞かせてくださいね。

試聴

注意!! 先述しましたように、この動画には視覚的に独自のストーリーが表現されているので、影響を受けたくない人は見ない方がいいです。
本当は、見てほしいですけど…

文

約20分続けて聴いてもらいたいので、
準備ができたら『Halloween part.Ⅰ』
コレ聴け!

 

文

残り20分、続けて聴いてもいいようなら、
『Halloween part.Ⅱ』
コレ聴け!

 

※参考 : アナログレコード『Pollen』『The Strands of the Future』の日本版ライナーノーツ
CD『Halloween』英語版、日本版ライナーノーツ
著書 「ユーロ・ロック集成」